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大人になった私が、白ポスト(=有害図書回収箱)について調べてみた

普段は気に留めない街の疑問を、執拗に追及するハイエナズクラブ。今回は、誰もが見たことがあるが誰もが詳しくは知らない「白ポスト」を調べ尽くして、その「中」まで覗いてきました。


いつもの街、いつもの道、いつもどおりの日々を過ごしていると、世界は退屈な物に思えるかもしれません。ですが、普段は通り過ぎてしまっている風景を一つ切り取り追いかけてみると、その世界は意外と面白かったりするのです。

例えばコチラ、

白ポスト

皆さんはご存知でしょうか?

日本郵政が管轄している「赤ポスト」とたびたび比較されるこれは、「白ポスト」と呼ばれているものです。その目的は、青少年有害図書回収、つまりエロ本エロビデオなどをポストインするものなのです。

当時女学生だった私は、通学路に置いてあったこれを一度認識してから、気になってしょうがなくなりました。これは一体何なのか。どうしてここにあるのか。そして、その中はどうなっているのか。
白ポストについて、誰かに尋ねることが出来るわけもなく、また誰かが教えてくれるわけでもありません。ただただ見つめるだけの日々が続きました。そして全国でこれらと出会うたびに写真を撮り、その不思議な存在に思いを馳せていたのです。

白ポスト白ポスト:四角型

気になるなあ〜〜……

白ポスト白ポスト:丸型

白ポストって…いったい何なんだよ…

白ポスト白ポスト:ヤギの箱

なんなんだ!! こんなに種類があって!!!味があって!!

白ポスト白ポスト:ひつじの箱

気になるよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! これっていったい、なんなんだよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!

白ポスト白ポスト:手作りの温もり溢れ型

そんな中、白ポストは兵庫県の尼崎発祥という驚きの情報を仕入れました。

気が付けば青少年とは言えない年齢になりました。大人になって、大抵のところは行けるし、大抵のことは知ることが出来る。
でも、私はこんなに気になっていた白ポストについて何にも知らないじゃないか。

こうなったら、徹底的に調べてやる…!!

ということで、
訪れたのは尼崎の白ポストを管理している尼崎市立青少年センターさんであります。
(※勿論アポ取ってます)

白ポスト

通されたそこは、広々とした会議室でした。3人のスタッフさんが出迎えてくれます。

「尼崎市こども青少年局青少年課長です。」

「青少年課長補佐です。」

「青少年愛護担当、企画専門委員です。以前は警察で働いていました。」

こ、これは大変なことになったぞ。馬鹿な私でも分かる、私の為にわざわざ偉い人達が集合してくれている…

●今日は貴重なお時間をいただき誠に感謝しております。よろしくお願いします。

「「「よろしくお願いします。」」」

●あの、何を言っているんだろう?と思われるかもしれないんですが、私、いわゆる「白ポスト」昔から大好きなんです。見つけたら必ず写真に収めて、記録しているんです。

「…はい」「…」「…」

●(アッ引かれてる)すみません。なんだか、本当にすみません〜〜〜。
今日はずっと疑問に思っていたことをズバリ質問させていただきたいと思います!

白ポストの長い歴史

●白ポストは尼崎発祥ということなんですが、その歴史について教えていただけますでしょうか?

「作られたのはだいぶ昔のことなので、正式な資料としては残っていません。 ただ年表によると、昭和36年に白ポストが尼崎に設置されて、それが発祥になった、という記載があります。」

●凄い!その年表、拝見したいです!

「はい。どうぞ」

白ポスト補導のあゆみ(平成7年刊行)より

1961年(昭和36年)4月 悪書追放ポストとして「白ポスト」が河本病院前に設置。尼崎が発祥の地となる。

1966年(昭和41年)  白ポスト全国へと広がる

〜〜

1995年(平成7年) JR立花駅・阪神尼崎駅・阪急塚口各駅に白ポスト設置(尼崎西ライオンズクラブ寄贈)

●具体的な年月・場所まで…これは貴重な資料ですね。

「1950年代に悪書追放運動が盛んになった背景もあり、白ポストが誕生したと考えられます。また、1963年・1965年に内閣府が中心となり悪書追放を促進したということもあって、白ポストが全国に普及したのでしょう。」

白ポストの中身をしっかり分析

●白ポストってどのくらいの個数があるのでしょう?誰がどんな風に回収しているのですか?

「尼崎市では現在6か所に白ポストを設置しています。週一回、青少年課職員と少年補導委員が担当となり回収に当たっています。」

●思ったよりも頻繁に回収されているんですね。回収されたものはどこに集めるのですか??

「ここ青少年センターです。集めた数と種類を記録して、分析しています。」

●えええ?!ちゃんと記録と分析も行っているのですね。

白ポスト

いただいた資料には、回収した本の種類とその数が細かく記録されていました。

●う〜ん、こうやって見ると、関係なさそうなものも結構投函されているんですね?

「そうなんです。ゴミ箱と間違えて、普通の雑誌やゴミを入れられてしまうことも多いのです。」

●あれ?このH25年の6月、物凄い量の有害図書類が回収されていますが…?

白ポスト

「倒産した業者が投函したようです。白ポストから溢れるくらいの量でした」

●廃棄場所に困ったんでしょうね…

しかしながら、白ポストはリサイクルボックスでもゴミ箱でもありません。 この問題に関しては、投函する側がきちんと意識していくべきですね。

エロ本からエロビデオへ、エロビデオからエロDVDへ

●白ポストの傾向としてはどんな感じなのでしょうか?

「昔はほぼ雑誌だけだったのですが、それからビデオテープ、そしてDVDと、回収内容が変わってきていますね。過激な描写の漫画も増加傾向にあります。」

●なるほど。あれですかね?やっぱり最近じゃDVDよりもブルーレイが増えてきてるんですかね?

「うーん…どうなんでしょう…」

「そこまでは判別していませんね…。」

DVDとブルーレイの回収量の差はハッキリとは分かりませんでした。ですが、時代の流れに沿って媒体自体が変わっていっているのは明らかなようです。

白ポスト

白ポスト苦労話

●白ポストに関する、苦労話ってありますか??

「駅に置いてあるからか、酔っ払いが壊してしまうことがありますね。」

●人が多いところにはつきものですね。壊れた場合どうするのですか?

「勿論修理します。修繕記録がこちらです。週に一度の回収の時に、破損がないか・痛んでないかなどの確認も一緒に行っているんです。」

その記録には、白ポストビフォーアフターがしっかりと記録されていました。酔っ払っているからといって何をしても良い訳ではありません。白ポストファンの私としては憤りを感じずにいられませんでした。

白ポスト

図書館の返却口と間違える人も

「苦労話というか、不思議な話なんですが、図書館の返還ポストと勘違いした人が居ましたね。回収後に電話がかかってきて、慌てて対応したことがありますね。」

●それはまた…こんなこと言っちゃダメですけど、面白いネタですね笑

「爆弾騒ぎも起きたことがあります。白ポストの中から異音がする、ということで通報があり大騒ぎになりました。時限爆弾じゃないかと、それこそ警察が出動するような大騒ぎになったんですが、いざ中を開けてみると、万引き防止のタグが放り込まれていたんですよね。」

一時期テロが問題になった時には、駅のごみ箱の撤去とともに、いくつかの白ポストも消えました。 冒頭に挙げたこの白ポストも、残念ながら今はもう存在していません。

白ポスト

今では笑い話になりますが、本当に迷惑な話ですね…

少子化やインターネットの発達…白ポストの未来は?

●今後、白ポストが新しく作られることはありそうですか?

「今のところ新しく作られる予定はありませんね。」

●では逆に、白ポストの撤去予定はありますか?

「今のところ撤去するという計画もありません。たまに修繕の為に一時的に撤去することはありますが、再設置しますね。 確かに時代の流れはあるかと思いますが、今現在で毎回それなりの数が回収されているため、暫くは無くならないと思います。」

先ほどのテロ問題、少子化問題や、インターネットの発達など、白ポストを取り巻く状況は変わってきています。全体的に見ていると減少傾向のように感じますが、その需要がある限りは白ポストは存在し続けるでしょう。

白ポスト

白ポストの豆知識いろいろ

色々気になることがあったのですが、時間の兼ね合いでここは少し速足でご紹介させていただきます。

●白ポスト値段

→1995年の寄贈品は、一台12万7000円〜20万程。

●白ポスト素材

→初期はドラム缶を使用したものと言われている(wikipediaより)

白ポスト

現代ではステンレス製のものが多い

白ポスト

●白ポストの重さ

→詳しくはわからないが、大人2人がかりでやっと持ち上げられるくらい

多分今まで聞かれたことがないだろう、どうでもいい質問も、一つ残らず拾ってくれます。
長年モンモンと抱えていた疑問が少しずつ解決していくのは、心地良くもあります。

白ポストわたし「わ〜!!これは、良い白ポストですね〜〜」「そうですか?」

白ポストの核心に迫ってみる

●白ポストをもっと普及させるために、何か広報活動などはされていますか?

「いや、特にありませんね。市のホームページだけです。」

●そうなんですね。白ポストが作られた経緯には悪書追放運動が深く関わっており、それに対して少し過激なイメージも持っていたんですが、そこまで能動的に白ポストの啓蒙活動は行っていない、と。

「そうですね。例えばどんなメディアにも表現の自由というのがありますし、どんな書物にも文化的な側面があります。

また、子供にとって有害という基準を設けてはいますが、大人にとってはそれは有害ではないのです。」

白ポスト白ポスト家型:煉瓦製

「青少年保護というものは、積極的にその有害とされるものを排除して行くものでも、子どもに制限を強いるものでもありません。大人が、子どもを守る為のものなんです。

●私にはまだ子どもが居ませんが、社会的弱者になりやすい子どもを守る為には、大人が自主的に行動しなければならない、ということは大変理解出来ます。

「子どもを守るために、世の中のお父さん達は、外で有害と思えるものを買ったのなら家に帰る前にこのポストに入れて家庭に持ち込まない。そんな使い方をしてほしいですね。」

白ポスト白ポスト家型:ホッコリ木製

●白ポストという対象物に惹かれたのがきっかけでここに来ましたが、なんだか考えさせられました。本日はありがとうございました。

「こちらこそ、興味を持っていただいてありがとうございました。」

白ポスト

そして、その白ポストの「中」へ

●…あのー…最後にお願いがあるんですが…

「はい」

●回収したものって、青少年センター内に集めているんですよね…

「はい」

●…見せていただくことは可能でしょうか。

「…どうしましょう…」

私も見たことがありませんよ…

「せっかく来ていただいたんですしねぇ…うーん…」

「…いいでしょう、こちらへどうぞ。」

白ポスト

本当に無理なお願いばかりしていますが、案内していただくことになりました!

会議室を出て廊下を抜けると、地下室へ続く階段へと辿り着きました。 こぉん、こぉんと一段ずつ降りていきます。鍵を開けてもらい、ドアを開ける。

白ポスト

そこには、大量の雑誌、漫画、ビデオ、DVDが山積みとなっていました。

廃棄しやすいようにするためか、少量ずつ紐でしばられています。

これが…白ポストの中身…
凄いな…なんというか……

白ポスト

肌色〜!!!!
肌色だ〜!!!

「半年に一回、纏めて溶解処理をするんですよ。」

その中にはランドセルを背負った若い若い女性が表紙の作品もありました。
大人には色々あって、勿論趣味趣向もあります。でも、大人のこのドロドロとした部分は、子どもに見せたくないというか、見られたくないかもしれない。

白ポスト

いやはや貴重なお話しを聞かせていただきました。
これで終わり…そうですが、なんと後日談があるんです。

回収について行ってみた

ハイエナズクラブの執拗な追及はどこまでも続く。
翌週、阪神電鉄の代表駅の一つでもある尼崎駅に私は居ました。

実はこの日、白ポストの回収現場を見学させてもらうことになったのです。

白ポスト

改札を出てすぐのところに、白ポストがあります。

白ポストをボンヤリと眺める。誰もポストに近付く気配はありません。白ポストは特に主張する訳でもなく、街の中に溶け込んでいます。

白ポスト

と、そこにガヤガヤと人が集まってきました。

皆さん軍手をされており、戦闘対戦は万全です。

白ポスト二重になっていた鍵が外されます。

白ポスト勢いよく白ポストの中にある内カゴがひきだされます。

中には無数の冊子が入っています。それを、青少年に有害なもの・そうでないもの、大変慣れた手つきで区別していきます。

白ポスト

「今日は少ないね」

「今までで一番少ないかも?」

白ポスト

でも、そこには確かに対象物が入っていました。

白ポスト

「では、お疲れ様でした。」

回収作業はものの数分で終わり、集まった少年補導委員の方々は足早にその場所を去りました。そしてそこに残されたのは私と白ポストだけになりました。

白ポスト

今日も街の片隅でひっそりと、認識されなくとも、ゴミを入れられようと、口を開けて待っている白ポスト。

『子どもを守るためのポストなんです。』

もしかしたら知らない場所で、子どもだった私のことも守ってくれたのかもしれません。
皆さんの近くにもきっとあります。探してみると、普段の景色が違って見えるかもしれませんね。

白ポスト

いつもの街、いつもの道、いつもどおりの日々を過ごしていると、それらは退屈な景色に見えるかもしれません。
ですが、普段は通り過ぎてしまう風景の一つを知ると、世界はとても味わい深かったりするのです。

ハイエナズクラブ
【執筆】金原みわ
【企画・構成】金原みわ、zukkini、赤ソファ
【撮影】金原みわ、zukkini、中央線忠則

Special Thanks:SAkUra(写真提供)


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ハイエナズクラブ編集部 Hyenas Clubs

インターネット上の残飯情報を拾っては記事に変える「インターネット界のハイエナ」ことハイエナズクラブです。

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